ケロイド・肥厚性瘢痕(傷あとの盛り上がり)の治療|保険診療

手術やけが、やけど、ニキビ、ピアスのあとが赤く盛り上がる・硬くなる・かゆい——このような傷あとは、肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)やケロイドの可能性があります。どちらも傷が治る過程で炎症が長引き、コラーゲンなどの線維が過剰にたまることで起こる「病的瘢痕」です。

下北沢スキンクリニックでは、形成外科専門医が保険診療で傷あとのご相談をお受けしています。肥厚性瘢痕は元の傷の範囲内、ケロイドは範囲を越えて広がるという違いがあり、経過や治療の考え方も異なります。このページでは、両者の見分け方・原因・治療法・受診の目安を図を使って解説します。

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こんな傷あとのお悩みはご相談ください

  • 手術や帝王切開の傷あとが、赤く硬く盛り上がってきた
  • ピアスの穴のまわりに、しこりやふくらみができた
  • 胸や肩のニキビのあとが盛り上がり、少しずつ広がっている
  • 傷あとがかゆい・痛い、服にこすれて気になる
  • 関節まわりの傷あとが引きつれて動かしにくい
  • お子さまのけがややけどのあとが目立ってきた

 

肥厚性瘢痕とケロイドの違い

傷が治った直後に赤みが残ること自体は珍しくありません。通常の傷あとは、時間とともに白く平らに落ち着いていきます。一方、真皮の深い層で炎症が長引くと、傷あとが硬く盛り上がることがあります。見分けるポイントは、元の傷の範囲を越えて広がっているかどうかです。

肥厚性瘢痕とケロイドの違いを示す皮膚断面の図肥厚性瘢痕は線維化が元の傷の範囲内にとどまり、ケロイドは元の傷の外側の正常な皮膚へ広がることを、表皮・真皮・皮下脂肪の断面で比較した模式図肥厚性瘢痕とケロイドの違い(皮膚の断面)表皮真皮皮下脂肪肥厚性瘢痕線維化が元の傷の範囲内にとどまる元の傷の幅時間とともに平らになることが多いケロイド線維化が元の傷の外へ広がる元の傷の幅自然には縮みにくく、再発しやすい
図1|肥厚性瘢痕とケロイドの違い(説明用の模式図)
肥厚性瘢痕ケロイド
広がり原則として元の傷の範囲内元の傷の外側の正常な皮膚へ広がる
目立ち始める時期傷が治ってから数週〜数か月数か月以上たってから。年単位で大きくなることも
自然経過半年〜数年かけて平らになる例が多い自然には縮みにくく、再発しやすい
症状赤み・硬さ・かゆみ・痛み、関節部では引きつれ赤み・硬さ・強いかゆみ、横からつまむと痛むことも
きっかけ手術・けが・やけどなど比較的大きな傷ピアス・ニキビ・虫刺されなど小さな傷からも
表1|典型例の比較です。両者の中間的な性質をもつ傷あともあり、経過をみて判断することがあります。

 

傷あとの経過の目安

傷あとは、閉じた直後が「完成形」ではありません。赤みや硬さは数か月かけて変化し、通常は半年〜1年以上かけて白く平らな成熟瘢痕へ落ち着いていきます。そのため「術後1か月で赤い」だけでは異常とはいえず、時間とともに良くなっているか、悪くなっているかが大切な判断材料です。

傷あとの経過の目安と受診を考えたいサイン傷が閉じてから1か月、1〜3か月、半年〜1年以上と、赤い傷あとが白く平らな成熟瘢痕へ変わっていく通常の経過と、赤みや盛り上がりが強くなる・かゆみが続く・元の傷の外へ広がるなど受診を考えたい変化をまとめた図傷あとの経過の目安傷が閉じた直後が「完成形」ではありません。数か月〜1年以上かけて変化します。傷が閉じる〜1か月1〜3か月半年〜1年以上通常の経過赤い線状の傷赤み・硬さが出やすい赤みが引き、やわらかく白く平らな成熟瘢痕へ受診を考えたいサイン● 数か月たっても赤み・盛り上がりが引かない、むしろ強くなる● かゆみ・痛みが続く、関節まわりが引きつれて動かしにくい● 元の傷の外へ広がってくる(ケロイドは年単位で拡大することも)
図2|傷あとの一般的な経過と、受診を考えたい変化(個人差があります)

 

なぜ傷あとが盛り上がるのか

傷の治り方(創傷治癒)は、炎症期 → 増殖期 → 再構築期の段階を経て進みます。真皮まで達する傷では、線維芽細胞がコラーゲンをつくって傷を補強し、その後組織が作り替えられて傷あとは落ち着いていきます。

肥厚性瘢痕やケロイドでは、真皮の深い層で炎症が長引き、コラーゲンの産生と分解のバランスが崩れて線維が過剰にたまります。炎症を長引かせる大きな要因が、体の動きによって傷あとが繰り返し引っ張られる力(張力)です。そのほか、感染、傷の深さ、体質なども関係し、単一の原因で説明できるものではありません。

傷が治る反応と過剰な線維化の流れ皮膚損傷、炎症期、増殖期、再構築期と進む創傷治癒の流れのうち、皮膚が引っ張られる力・長引く炎症・感染・体質などが影響すると、適切な再構築ではなく過剰な線維化が起こり肥厚性瘢痕やケロイドになることを示した図傷が治る反応と「過剰な線維化」真皮の深い層で炎症が長引くと、コラーゲンが過剰にたまり盛り上がります① 皮膚損傷けが・手術・ピアスなど② 炎症期免疫細胞が集まる③ 増殖期コラーゲンがつくられる④ 再構築期組織が作り替えられる皮膚が引っ張られる力・長引く炎症・感染・体質が影響適切な再構築炎症が落ち着き、白く平らな成熟瘢痕へ過剰な線維化肥厚性瘢痕・ケロイド
図3|通常の創傷治癒と、過剰な線維化に至る経路(説明用の模式図)

 

ケロイドができやすい部位と体質

耳たぶ、前胸部、肩、上腕、背中、下腹部などは、ケロイドができやすい部位として知られています。多くは体の動きや呼吸で皮膚が常に引っ張られる場所で、ニキビや毛穴の炎症が起きやすい部位とも重なります。

ケロイドができやすい部位の図上半身のイラストで、耳(ピアス)、前胸部、肩、上腕、下腹部など、ケロイドが生じやすい部位を示した図ケロイドができやすい部位動きや呼吸で皮膚が引っ張られやすい場所に多くみられます耳(ピアス)耳たぶ・軟骨部前胸部ニキビ・手術のあとから肩肩甲部・背中にも上腕予防接種のあとなど下腹部帝王切開・恥骨上部
図4|ケロイドの好発部位(説明用の模式図)

ご本人やご家族にケロイドの既往がある場合は、ピアスや手術を受ける前に必ず医師に伝えてください。ただし、体質だけで結果が決まるわけではなく、傷の部位・深さ・炎症の程度・引っ張られる力が重なって生じます。また、傷あとが目立つことと、手術や処置の失敗は同じではありません。どのような処置でも傷あとが残る可能性はあり、経過は「傷ができてから何週・何か月たったか」と合わせて評価します。

 

似た見た目の病気との見分け

状況考えられるもの見分けのヒント
ピアス部のしこりケロイド、感染、異物反応、金属による接触皮膚炎膿・熱感・急な腫れ、金属を外すと改善 など
手術の傷の近くのしこり肥厚性瘢痕、縫合糸への反応、粉瘤(ふんりゅう)糸が出てくる、中心に小さな穴がある など
傷のきっかけがはっきりしない皮膚線維腫などの良性腫瘍、まれに悪性の皮膚腫瘍急速な増大、出血・潰瘍、形や色の不規則な変化
表2|急速に大きくなる、出血や潰瘍が続く、膿や発熱を伴う場合は自己判断を避けてください。必要に応じて病理検査を行います。

 

ケロイド・肥厚性瘢痕の治療法

治療の基本は、炎症を抑え、傷あとにかかる張力を減らすことです。まずは貼り薬・塗り薬や圧迫・固定などの保存的治療から始め、症状や部位に応じて注射や手術を組み合わせます。単独の治療ですべてが解決するとは限らず、複数を組み合わせるのが一般的です。

治療法ねらい注意点
ステロイドの貼り薬・塗り薬炎症を抑え、赤み・かゆみ・盛り上がりをやわらげる数か月単位で続けることが多い。皮膚が薄くなるなどの副作用に注意
ステロイドの局所注射硬く盛り上がった部分を平らに・やわらかくする注射時の痛み、皮膚の萎縮・色の変化、月経不順などがありうる
内服薬かゆみや炎症を抑える補助単独で治すのは難しく、他の治療と併用
圧迫・固定シリコーンシート・テープ・サポーターで張力を減らす長く続けることが大切。かぶれに注意
手術引きつれの解消、張力のかかりにくい縫合(Z形成術など)ケロイドは切除のみでは再発しやすく、術後治療を組み合わせる
術後の放射線治療ケロイド切除後の再発予防専門施設と連携して行う
表3|治療の多くは保険診療の対象です。治療法や材料によっては自費となるものもあります。効果や副作用には個人差があります。

とくにケロイドは「切除すれば終わり」とは限りません。切除のみでは再発の可能性が高く、部位や大きさ、年齢、既往歴などを踏まえて、術後の注射・テープ・放射線治療などを組み合わせた計画が必要です。

下北沢スキンクリニックでの診療について形成外科専門医が保険診療で傷あと(肥厚性瘢痕・ケロイドなど)を診察し、状態に合わせて治療をご提案します。手術後の傷あと、けがのあと、ピアスまわりのしこり、お子さまの傷あともご相談ください。治療の実施可否は診察時に判断し、放射線治療など院外での治療が必要な場合は、提携先などの医療機関をご紹介します。ここに挙げた治療法がすべて当院で受けられるという意味ではありません。

 

ご自宅で気をつけたいこと

傷を目立たせにくくするために

  • 担当医から案内された洗浄・保護方法を守る
  • 抜糸後もしばらくはテープで固定し、引っ張られにくくする
  • こする・掻く・強い摩擦を避ける
  • 傷が閉じたら紫外線対策(色素沈着の予防)

避けたいこと

  • 自己判断で強く圧迫したり、刺激を加えたりする
  • 治りきっていない傷に市販品を貼り続ける
  • ケロイドの既往があるのに、相談なくピアスを開ける
  • しこりを自分でつぶす・針を刺す

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まとめ

  • 肥厚性瘢痕は元の傷の範囲内、ケロイドは範囲を越えて広がるのが基本的な違いです。
  • 原因は体質だけでなく、皮膚にかかる張力と長引く炎症が大きく関わります。
  • 治療は貼り薬・塗り薬・注射・圧迫・手術などを組み合わせ、多くは保険診療で行えます。
  • 赤み・盛り上がりが続く、広がってくる、かゆみや痛みが強い場合は、形成外科・皮膚科へご相談ください。

 

よくあるご質問

手術後1か月の傷が赤いのは異常ですか?

赤みだけで異常とは言い切れません。傷あとは半年〜1年以上かけて落ち着いていくのが一般的です。盛り上がりが増す、痛みや浸出液を伴う場合は、手術を受けた医療機関の担当医にご相談ください。

ケロイドは自然に消えますか?

肥厚性瘢痕は時間とともに平らになっていくことが多い一方、ケロイドは自然に縮みにくく、長く続いたり広がったりすることがあります。気になる症状があれば早めの診察をおすすめします。

傷あとの治療は保険がききますか?

肥厚性瘢痕・ケロイドの診察や、貼り薬・塗り薬・注射・手術などの多くは保険診療の対象です。ただし、治療法や材料、目的によっては自費となるものもあるため、診察時にご説明します。

ケロイドがあっても、またピアスを開けて大丈夫ですか?

ケロイドの既往があると、同じ部位の再発や別の部位での発症のリスクがあります。新たなピアスは避けた方がよい場合もあるため、開ける前に診察で個別のリスクをご相談ください。

子どもの傷あとも相談できますか?

はい。けがややけどのあと、手術の傷あとなど、お子さまの傷あともご相談いただけます。成長に伴う変化も含めて経過をみていきます。

ケロイドは切除すれば治りますか?

ケロイドは切除のみでは再発しやすいことが知られています。手術を行う場合も、術後の注射・テープ・放射線治療などを組み合わせた計画が必要です。

 

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監修医師

保坂 宗孝(下北沢スキンクリニック 院長)
日本形成外科学会認定 形成外科専門医/日本美容外科学会(JSAPS)認定 美容外科専門医/精神保健指定医

参考情報

  1. 日本形成外科学会ほか「形成外科診療ガイドライン 急性創傷/瘢痕ケロイド」(Minds ガイドラインライブラリ)
  2. 瘢痕・ケロイド治療研究会「ケロイド・肥厚性瘢痕 診断・治療指針2018」/Ogawa R, et al. Burns Trauma. 2019;7:39(PubMed)
  3. MSDマニュアル家庭版「ケロイド」(msdmanuals.com)
  4. American Academy of Dermatology「Keloid scars: Diagnosis and treatment」(aad.org)

 

下北沢でケロイド・傷あとのご相談なら、土曜日も診療している下北沢スキンクリニックへ

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