ケロイド・肥厚性瘢痕(傷あとの盛り上がり)の治療|保険診療
手術やけが、やけど、ニキビ、ピアスのあとが赤く盛り上がる・硬くなる・かゆい——このような傷あとは、肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)やケロイドの可能性があります。どちらも傷が治る過程で炎症が長引き、コラーゲンなどの線維が過剰にたまることで起こる「病的瘢痕」です。
下北沢スキンクリニックでは、形成外科専門医が保険診療で傷あとのご相談をお受けしています。肥厚性瘢痕は元の傷の範囲内、ケロイドは範囲を越えて広がるという違いがあり、経過や治療の考え方も異なります。このページでは、両者の見分け方・原因・治療法・受診の目安を図を使って解説します。
メールでのご相談 : info@shimokitazawa-skin.com
こんな傷あとのお悩みはご相談ください
- 手術や帝王切開の傷あとが、赤く硬く盛り上がってきた
- ピアスの穴のまわりに、しこりやふくらみができた
- 胸や肩のニキビのあとが盛り上がり、少しずつ広がっている
- 傷あとがかゆい・痛い、服にこすれて気になる
- 関節まわりの傷あとが引きつれて動かしにくい
- お子さまのけがややけどのあとが目立ってきた
肥厚性瘢痕とケロイドの違い
傷が治った直後に赤みが残ること自体は珍しくありません。通常の傷あとは、時間とともに白く平らに落ち着いていきます。一方、真皮の深い層で炎症が長引くと、傷あとが硬く盛り上がることがあります。見分けるポイントは、元の傷の範囲を越えて広がっているかどうかです。
| 肥厚性瘢痕 | ケロイド | |
| 広がり | 原則として元の傷の範囲内 | 元の傷の外側の正常な皮膚へ広がる |
| 目立ち始める時期 | 傷が治ってから数週〜数か月 | 数か月以上たってから。年単位で大きくなることも |
| 自然経過 | 半年〜数年かけて平らになる例が多い | 自然には縮みにくく、再発しやすい |
| 症状 | 赤み・硬さ・かゆみ・痛み、関節部では引きつれ | 赤み・硬さ・強いかゆみ、横からつまむと痛むことも |
| きっかけ | 手術・けが・やけどなど比較的大きな傷 | ピアス・ニキビ・虫刺されなど小さな傷からも |
傷あとの経過の目安
傷あとは、閉じた直後が「完成形」ではありません。赤みや硬さは数か月かけて変化し、通常は半年〜1年以上かけて白く平らな成熟瘢痕へ落ち着いていきます。そのため「術後1か月で赤い」だけでは異常とはいえず、時間とともに良くなっているか、悪くなっているかが大切な判断材料です。
なぜ傷あとが盛り上がるのか
傷の治り方(創傷治癒)は、炎症期 → 増殖期 → 再構築期の段階を経て進みます。真皮まで達する傷では、線維芽細胞がコラーゲンをつくって傷を補強し、その後組織が作り替えられて傷あとは落ち着いていきます。
肥厚性瘢痕やケロイドでは、真皮の深い層で炎症が長引き、コラーゲンの産生と分解のバランスが崩れて線維が過剰にたまります。炎症を長引かせる大きな要因が、体の動きによって傷あとが繰り返し引っ張られる力(張力)です。そのほか、感染、傷の深さ、体質なども関係し、単一の原因で説明できるものではありません。
ケロイドができやすい部位と体質
耳たぶ、前胸部、肩、上腕、背中、下腹部などは、ケロイドができやすい部位として知られています。多くは体の動きや呼吸で皮膚が常に引っ張られる場所で、ニキビや毛穴の炎症が起きやすい部位とも重なります。
ご本人やご家族にケロイドの既往がある場合は、ピアスや手術を受ける前に必ず医師に伝えてください。ただし、体質だけで結果が決まるわけではなく、傷の部位・深さ・炎症の程度・引っ張られる力が重なって生じます。また、傷あとが目立つことと、手術や処置の失敗は同じではありません。どのような処置でも傷あとが残る可能性はあり、経過は「傷ができてから何週・何か月たったか」と合わせて評価します。
似た見た目の病気との見分け
| 状況 | 考えられるもの | 見分けのヒント |
| ピアス部のしこり | ケロイド、感染、異物反応、金属による接触皮膚炎 | 膿・熱感・急な腫れ、金属を外すと改善 など |
| 手術の傷の近くのしこり | 肥厚性瘢痕、縫合糸への反応、粉瘤(ふんりゅう) | 糸が出てくる、中心に小さな穴がある など |
| 傷のきっかけがはっきりしない | 皮膚線維腫などの良性腫瘍、まれに悪性の皮膚腫瘍 | 急速な増大、出血・潰瘍、形や色の不規則な変化 |
ケロイド・肥厚性瘢痕の治療法
治療の基本は、炎症を抑え、傷あとにかかる張力を減らすことです。まずは貼り薬・塗り薬や圧迫・固定などの保存的治療から始め、症状や部位に応じて注射や手術を組み合わせます。単独の治療ですべてが解決するとは限らず、複数を組み合わせるのが一般的です。
| 治療法 | ねらい | 注意点 |
| ステロイドの貼り薬・塗り薬 | 炎症を抑え、赤み・かゆみ・盛り上がりをやわらげる | 数か月単位で続けることが多い。皮膚が薄くなるなどの副作用に注意 |
| ステロイドの局所注射 | 硬く盛り上がった部分を平らに・やわらかくする | 注射時の痛み、皮膚の萎縮・色の変化、月経不順などがありうる |
| 内服薬 | かゆみや炎症を抑える補助 | 単独で治すのは難しく、他の治療と併用 |
| 圧迫・固定 | シリコーンシート・テープ・サポーターで張力を減らす | 長く続けることが大切。かぶれに注意 |
| 手術 | 引きつれの解消、張力のかかりにくい縫合(Z形成術など) | ケロイドは切除のみでは再発しやすく、術後治療を組み合わせる |
| 術後の放射線治療 | ケロイド切除後の再発予防 | 専門施設と連携して行う |
とくにケロイドは「切除すれば終わり」とは限りません。切除のみでは再発の可能性が高く、部位や大きさ、年齢、既往歴などを踏まえて、術後の注射・テープ・放射線治療などを組み合わせた計画が必要です。
ご自宅で気をつけたいこと
傷を目立たせにくくするために
- 担当医から案内された洗浄・保護方法を守る
- 抜糸後もしばらくはテープで固定し、引っ張られにくくする
- こする・掻く・強い摩擦を避ける
- 傷が閉じたら紫外線対策(色素沈着の予防)
避けたいこと
- 自己判断で強く圧迫したり、刺激を加えたりする
- 治りきっていない傷に市販品を貼り続ける
- ケロイドの既往があるのに、相談なくピアスを開ける
- しこりを自分でつぶす・針を刺す
メールでのご相談 : info@shimokitazawa-skin.com
まとめ
- 肥厚性瘢痕は元の傷の範囲内、ケロイドは範囲を越えて広がるのが基本的な違いです。
- 原因は体質だけでなく、皮膚にかかる張力と長引く炎症が大きく関わります。
- 治療は貼り薬・塗り薬・注射・圧迫・手術などを組み合わせ、多くは保険診療で行えます。
- 赤み・盛り上がりが続く、広がってくる、かゆみや痛みが強い場合は、形成外科・皮膚科へご相談ください。
よくあるご質問
手術後1か月の傷が赤いのは異常ですか?
赤みだけで異常とは言い切れません。傷あとは半年〜1年以上かけて落ち着いていくのが一般的です。盛り上がりが増す、痛みや浸出液を伴う場合は、手術を受けた医療機関の担当医にご相談ください。
ケロイドは自然に消えますか?
肥厚性瘢痕は時間とともに平らになっていくことが多い一方、ケロイドは自然に縮みにくく、長く続いたり広がったりすることがあります。気になる症状があれば早めの診察をおすすめします。
傷あとの治療は保険がききますか?
肥厚性瘢痕・ケロイドの診察や、貼り薬・塗り薬・注射・手術などの多くは保険診療の対象です。ただし、治療法や材料、目的によっては自費となるものもあるため、診察時にご説明します。
ケロイドがあっても、またピアスを開けて大丈夫ですか?
ケロイドの既往があると、同じ部位の再発や別の部位での発症のリスクがあります。新たなピアスは避けた方がよい場合もあるため、開ける前に診察で個別のリスクをご相談ください。
子どもの傷あとも相談できますか?
はい。けがややけどのあと、手術の傷あとなど、お子さまの傷あともご相談いただけます。成長に伴う変化も含めて経過をみていきます。
ケロイドは切除すれば治りますか?
ケロイドは切除のみでは再発しやすいことが知られています。手術を行う場合も、術後の注射・テープ・放射線治療などを組み合わせた計画が必要です。
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監修医師
保坂 宗孝(下北沢スキンクリニック 院長)
日本形成外科学会認定 形成外科専門医/日本美容外科学会(JSAPS)認定 美容外科専門医/精神保健指定医
参考情報
- 日本形成外科学会ほか「形成外科診療ガイドライン 急性創傷/瘢痕ケロイド」(Minds ガイドラインライブラリ)
- 瘢痕・ケロイド治療研究会「ケロイド・肥厚性瘢痕 診断・治療指針2018」/Ogawa R, et al. Burns Trauma. 2019;7:39(PubMed)
- MSDマニュアル家庭版「ケロイド」(msdmanuals.com)
- American Academy of Dermatology「Keloid scars: Diagnosis and treatment」(aad.org)
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