肝斑とADMの合併が多いって本当?

「肝斑と言われてトーニングを続けていたら、今度はADMと言われた」
「ADMと言われて強いレーザーを当てたら、肝斑が悪化した」

診察の中で、こうしたお話をよく耳にします。

クリニックを変えて来院された方から「前のクリニックでは肝斑と言われたのに、今はADMと言われた」と伺うこともありますし、その逆のパターンもあります。診断が変わると、患者さんは「どちらが正しいの?」「今までの治療は間違っていたの?」と不安になり、混乱してしまうのも無理はありません。

ですが、多くの場合、前の先生が間違えていたとは言いきれません。実は、肝斑とADMは一緒に存在していることが少なくないのです。今回は、文献をもとに「どれくらい合併しているのか」「なぜ診断が変わることがあるのか」をお伝えします。

ADMとは? 肝斑とのちがい

ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)は、本来は表皮にいるはずの色素をつくる細胞(メラノサイト)が、真皮で活発に働くことで生じる色素斑です。ADMは完全に真皮の病変です。20代以降の女性に多く、頬骨のあたりやこめかみ、額の両側などに、灰色〜青みがかった褐色の小さな点が集まったように見えるのが特徴です。

一方、肝斑は主に表皮のメラニンが増えた状態で、頬などに左右対称に、薄い茶色の境界がはっきりしない色素斑として現れます。ただし前回のコラムでお伝えしたように、肝斑も表皮だけの問題ではなく、真皮の老化線維芽細胞などが色素をつくる指令を出し続ける、慢性的な炎症状態が関わると考えられています。

肝斑 ADM
色素の主な場所 表皮(背景に真皮の環境変化) 真皮
見た目 薄い茶色、面状に広がる 灰色〜青褐色、点状の集まり
出やすい場所 頬、額、口まわり 頬骨部、こめかみ、額の両側、小鼻
強いレーザー 悪化することがある 主な治療法となり得る

出やすい年代や場所、女性に多いことなど、両者はとてもよく似ています。そして、同じ場所に重なって存在することもあります。

→ 肝斑は「炎症性疾患」? レーザーのみではなく、整えたい”土台”の話

実際、どれくらい合併しているの?

海外の報告では、ADMの方の約4〜5人に1人に肝斑が合併しているとされています。

  • 中国でADMの治療を受けた1,268人を調べた報告では、24.0%に肝斑が合併していました。
  • 中国の外来患者102人のADMでは、20.6%に肝斑が見られました。
  • 韓国の報告では、ADMの女性の23%に肝斑が合併していた一方、男性では見られませんでした。

さらに、2,675人を2つの時期に分けて比べた最近の研究では、後の時期のほうが肝斑を合併した方の割合が増えていました。見た目ではわかりにくい「隠れた肝斑」まで見つけられるようになったことが一因と考えられています。つまり、よく調べるほど合併が見つかるということです。

なお、これらは中国や韓国のデータが中心で、日本人での大規模な調査はまだ限られています。それでも、同じ東アジアの肌で同じ傾向が繰り返し報告されている点は、日々の診療の実感とも重なります。

「同じ病気の仲間」と考える見方もある

合併が多いことから、肝斑とADMを同じ流れの上にある状態としてとらえる先生もいます。その背景には、いくつかの共通点があります。

  • 原因が似ている:ADMは、真皮に元からある未熟なメラノサイトが、紫外線や女性ホルモンなどで目覚めて生じると考えられています。妊娠や紫外線、ホルモンの変化がきっかけになる点は、肝斑とよく似ています。
  • 真皮から共通のシグナル:ADMの病変部では、真皮の線維芽細胞とメラノサイトの間で、色素づくりを促す信号(SCF/c-kit)が強まっていました。報告した研究者は、肝斑との共通の仕組みがある可能性を指摘しています。
  • 肝斑にも真皮の変化がある:肝斑では、光老化した真皮の環境が色素づくりを長く刺激し続けることや、表皮と真皮の境目の膜が傷み、メラノサイトが真皮側に垂れ下がるように見えることが報告されています。

「肝斑は表皮、ADMは真皮」と単純に分けられないことが、こうした見方につながっていると考えられます。

一方で、別の病気として区別することが大事な点もあります。顕微鏡で見ると、ADMでは真皮のメラノサイトが増えているのに対し、表皮の色素は増えていません。ダーモスコピーなどの検査でも、両者は異なる特徴を示します。そして何より、治療への反応が逆になることがあります。この違いが、診断が変わる理由にも、治療の考え方にもつながります。

診断が変わるのは「前の診断が間違っていた」とは言い切れない

肝斑とADMが重なっている肌では、そのときにどちらが前面に出ているかで見え方が変わります。

  • 肝斑が強く出ている時期は、薄い茶色の広がりに隠れて、ADMの点状の色素が目立ちにくくなります。トーニングや内服で肝斑が落ち着くと、下にあったADMが見えてくることがあります。
  • 反対に、ADMに強いレーザーを当てると、その刺激で隠れていた肝斑が表に出てきたり、悪化したりすることがあります。ADMへのレーザー治療後に、合併していた肝斑の多くが悪化したという報告もあります。

つまり、最初の診断も、あとの診断も、それぞれの時点の肌を正しく見ていた可能性が高いのです。診断が変わったときは、「どちらが正しいか」ではなく、「今の肌でどちらが前に出ているか」と考えていただくと理解しやすくなります。

もちろん、最初から両方の合併を疑って診察することも大切です。当院でも、肝斑とADMは合併しやすいことをお伝えしたうえで、今の状態と治療の順番をご説明するようにしています。

合併しているときは「順番」と「強さ」が大切

ADMは真皮の病変のため、トーニングのような弱い照射や内服・外用だけでは薄くなりにくく、最終的にはADMに合わせたレーザー治療が必要になることが多くなります。一方で、その刺激は肝斑を悪化させる可能性があります。

  • ADMに強いレーザーを当てると、合併していた肝斑の約9割が悪化したという報告があります。肝斑を合併していなかった方でも、年齢や肌質によっては新たに肝斑が出てくることがありました。
  • 肝斑を合併していると、ADMのレーザー治療の効果も出にくく、照射を控えめにすることがすすめられています。
  • 一方で、治療前に隠れた肝斑まで見つけ、照射方法を工夫するようになった時期には、肝斑が悪化する割合が87.6%から50.1%まで下がったと報告されています。

日本でも以前から、表皮の色素(肝斑)と真皮の色素(ADM)は分けて、順番に治療する考え方が示されています。まずは前回のコラムでお伝えした「土台づくり」で肝斑の炎症を落ち着かせ、そのうえでADMへの照射の時期や強さを判断する、という流れです。

肌の状態は、いつも同じではありません

前回の肝斑のコラムでも、「肌の状態はいつも同じではない」とお伝えしました。この点がとても大切です。

肝斑が強い時期もあれば、落ち着いてADMが目立つ時期もあります。季節や日差し、ホルモンの変化、これまでの治療によっても、肌の見え方は変わります。一度ついた診断名がずっと同じとは限らないのは、肌が変化し続けているからです。

毎回肌の状態を診て、「以前こう言われたから」「前回この治療をしたから」ではなく、診断も含めて、今の肌の状態を診ていくことが重要だと考えています。

個人的な見解ですが、これからは、シミは慢性皮膚病として患者さんと一緒に、長期的な目線も踏まえて治療していくことが大切だと感じています。はじめてシミ取りのレーザーが世に出回ったとき、取ってしまえば一生でないような魔法の機械のイメージがありました。現在は機械のバリエーションが増え、希望される患者さんも増え、「シミ」という皮膚の状態への理解が深まり、皮膚の状態を診ながら、経過をしっかりとフォローしていく診療が求められていると思っています。保険診療でも、たとえば湿疹の患者さんに外用薬を出して、次の受診で反応を見て調整するのは当たり前です。初診時の診断を、その後の経過で見直すことも珍しくありません。自由診療では「施術」が商品として切り出されたことで、この「診る→治療する→経過を見て見直す」という流れが抜け落ちやすくなったのだと思います。コースを組んで回数を消化すれば終わり、という仕組みはわかりやすい反面、途中で肝斑が悪化しても同じ設定で照射が続く危うさがあります。逆に肝斑は落ち着いて、ADMが気になってきたときに、前回と同じ施術でよいのかの相談、診断ができる環境はとても大切ですね。

※効果や副作用には個人差があります。肌質や体調によって合う治療は異なりますので、医師にご相談ください。

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※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としています。症状や適した治療はお一人ずつ異なります。診断・治療については医師にご相談ください。掲載内容は2026年10月時点の知見に基づきます。

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