その乾燥、保湿不足だけじゃないかも。秋冬は「洗い方」から見直そう

 

秋冬の乾燥・洗顔後のつっぱりの原因と、肌のpHから考える洗顔の見直しポイント

秋冬になると「洗顔後に肌がつっぱる」「いつもの化粧水がしみる」と感じる方が増えます。保湿を強化しても落ち着かないときは、肌の表面のpH(弱酸性)の乱れと、毎日の洗顔の影響が関わっていることがあります。この記事では、秋冬に肌が乾燥する理由を角層のpHから説明し、保湿と同じくらい大切な「洗い方」の見直しポイントを紹介します。

肌・プールの水・洗顔料をpHで比べる

健康な肌の表面は弱酸性。肌よりアルカリ寄りのものに触れると、一時的に肌のpHが上がります。

健康な肌
pH 4.5〜5.5
 
プールの水
中性付近が多い
 
石けん系洗顔料
pH 9〜10前後
 
 
0 酸性7 中性アルカリ性 14

弱酸性の肌では

セラミドを作る酵素がよく働き、角層細胞どうしの結びつきも保たれます。

pHが上がった肌では

バリアがもろくなり、水分が逃げやすく、刺激を感じやすくなります。

※プールの水は衛生基準でpH5.8〜8.6と定められています。洗顔料のpHは製品により異なります。

pHの目盛りに、健康な肌、プールの水、石けん系洗顔料のおおよその位置を示した模式図です。数値は目安で、測定部位や製品、条件によって異なります。

この季節、「つっぱる」「しみる」が増える理由

秋が深まると、「洗顔後に肌がつっぱる」「いつもの化粧水がしみる」というご相談が増えます。多くの方はまず保湿を強化しますが、それだけではなかなか落ち着かないこともあります。

その背景にあるのが、肌の表面の「pH(酸性・アルカリ性の度合い)」の変化です。そして、このpHに毎日影響しているのが「洗顔」です。

健やかな肌は「弱酸性」で守られている

肌のいちばん外側には、「角層」という厚さわずか0.02mmほどの層があります。角層は、レンガ(角層細胞)をセメント(セラミドなどの脂質)でつないだ壁のような構造で、水分を逃がさず、刺激を入れない「バリア」の役割をしています。

健康な肌の表面は、pH4.5〜5.5ほどの弱酸性に保たれています。この弱酸性は、ただの数字ではありません。

  • セラミドを作り、バリアを完成させる酵素は、弱酸性の環境でよく働きます
  • pHが上がると、角層細胞どうしの結びつきをほどく酵素が働きすぎて、レンガの壁がもろくなります
  • その結果、水分が逃げやすく、刺激が入りやすくなります

つまり、肌の弱酸性は、バリアを保つための土台です。

秋冬は肌のpHが上がりやすい

実は、肌のpHは季節で変化します。アジアの複数の都市(日本の仙台を含む)や中国、韓国で行われた研究では、冬は夏より肌のpHが高く、水分が逃げやすくなっていました。韓国の研究では、冬には刺激を感じやすくなることも確かめられています。

秋冬にpHが上がる理由として、次のようなことが考えられています。

  • 汗が減る:汗に含まれる乳酸などは、肌を弱酸性に保つ材料のひとつです
  • 皮脂が減る:皮脂が分解されてできる脂肪酸も、肌を酸性にします
  • 角層のセラミドやうるおい成分が減る:冬にはセラミドが大きく減ることが報告されています
  • 生活の変化:熱いお湯での洗顔や長い入浴、暖房による乾燥が重なります

さらに、年齢とともに肌を酸性に保つ力も弱まります。普段は問題なくても、秋冬になると「急にしみるようになった」と感じるのは、このためです。

秋冬の乾燥やかゆみ全般については、秋冬になると肌が乾燥してかゆいのはなぜ?原因・保湿・皮膚科受診の目安を解説でも詳しく紹介しています。

保湿だけでは足りない理由

洗顔は、毎日肌のpHを動かしています。特に石けん系の洗顔料はpH9〜10ほどのアルカリ性で、洗ったあと肌のpHは一時的に上がります。

健康な肌であれば、数時間で弱酸性に戻ります。しかし秋冬の肌や年齢を重ねた肌は、戻る力が弱くなっています。戻りきらないうちに次の洗顔を迎えると、バリアがじわじわ弱っていきます。

さらに、洗浄力の強い洗顔や洗いすぎは、皮脂だけでなく角層のセラミドやうるおい成分まで洗い流します。どれだけ保湿しても、毎日の洗顔でそれ以上に引き算していれば、肌はなかなか整いません。

「足すケア(保湿)」と同じくらい、「引かないケア(洗顔)」が大切です。

身近な例:プールのあとの「かさかさ」

肌がアルカリ側に傾くと乾燥を感じる、ということを実感しやすいのが、プールのあとの肌です。

プールの水は、国の衛生基準でpH5.8〜8.6の範囲に管理され、実際には中性付近であることが多くあります。弱酸性(pH4.5〜5.5)の肌から見ると、アルカリ寄りの水です。そこに長く浸かると、肌の弱酸性が保てなくなり、うるおい成分も水に流れ出します。さらに、消毒用の塩素が角層に作用します。

研究でも、この影響が確かめられています。

  • 競泳選手では、2時間の練習の直後に肌から逃げる水分量が増えており、その増え方は屋外で練習するサッカー選手より大きくなっていました
  • 塩素を含むお湯に腕を浸けた研究では、角層の水分を保つ力が下がりました。特にアトピー性皮膚炎の方は、プールと同じくらいの薄い濃度でも影響を受けやすい結果でした

健康な肌なら、数時間で弱酸性に戻ります。ただ、これは毎日の洗顔と同じことが小さな規模で起きているともいえます。プールのあとは、真水のシャワーでよく流し、こすらず拭いて、すぐに保湿しましょう。

pHから考える秋冬の洗顔 5つのポイント

  1. 洗顔料は「弱酸性」を選ぶ
    全成分に「石ケン素地」や「カリ石ケン素地」とあるものはアルカリ性です。乾燥やしみる感じがある時期は、アミノ酸系などの弱酸性の洗顔料がおすすめです。
  2. お湯は32〜34℃の「ぬるま湯」で
    熱いお湯は肌の脂質を溶かし出します。手で触れて「少しぬるい」と感じるくらいが目安です。
  3. 泡をのせるのは30秒〜1分。こすらない
    泡で汚れを浮かせ、指でこすらずにやさしく洗います。長く洗うほど、セラミドも失われます。
  4. 朝は「洗いすぎない」
    皮脂が少ない方は、朝はぬるま湯だけ、または洗顔料をごく少量にしましょう。皮脂が気になる方は、Tゾーンだけ洗顔料を使うなど、部位で使い分けるのも有効です。
  5. 洗ったら数分以内に保湿
    洗顔後の肌は水分が逃げやすい状態です。セラミドなど、角層の成分を補える保湿剤をすぐに使いましょう。

洗顔料のタイプと見分け方

洗顔料のタイプ 全成分表示の目安 pHの傾向 秋冬の使い方
石けん系 石ケン素地、カリ石ケン素地、「ミリスチン酸などの脂肪酸」と「水酸化K(またはNa)」の組み合わせ アルカリ性(pH9〜10前後) 健康な肌なら問題ないことも多いですが、つっぱりやしみる感じがある時期は弱酸性への切り替えを検討します。
アミノ酸系など ココイルグルタミン酸Na、ココイルメチルタウリンNaなど 弱酸性〜中性に設計しやすい 乾燥や刺激感があるときの第一候補です。「弱酸性」と表示された製品の多くがこのタイプです。
ピーリング成分配合 AHA(グリコール酸など)、PHA(グルコノラクトンなど) 酸性寄り 角質ケアには役立ちますが、しみる時期は保湿重視の洗顔料に替えるのが無難です。

当院でも、肌の状態に合わせて選べる弱酸性の洗顔料を取り扱っています。どれが合うか迷ったら、診察の際にお気軽にご相談ください。

よくある誤解

「キュッとした洗い上がりは、しっかり落ちた証拠」

その「キュッ」やつっぱり感は、肌に必要な脂質まで落ちているサインです。洗ったあとも肌がしっとりやわらかいのが、ちょうどよい洗顔です。

「乾燥すると、かえって皮脂が増える」

肌の乾燥が皮脂を増やすという確かな根拠はありません。皮脂の量は主にホルモンや体質で決まります。「皮脂が多いこと」と「うるおいが足りないこと」は別の問題で、皮脂を気にして洗いすぎると、うるおいだけが失われてつっぱります。

「肌に合わなくなったのは、化粧品のせい」

いつもの化粧品が秋冬だけしみる場合、化粧品よりも肌のバリアが弱っていることが多くあります。化粧品を次々に替える前に、洗顔を見直してみてください。

こんなときは皮膚科へ

次のような場合は、乾燥だけでなく、酒さ・脂漏性皮膚炎・かぶれなどが隠れていることがあります。

  • 顔の赤みやほてりを繰り返す
  • かゆみが強い、ぶつぶつや粉ふきがある
  • 洗顔と保湿を見直して、2〜4週間たっても良くならない

よくある質問

にきびや皮脂が気になる肌は、アルカリ性の洗顔料のほうがよいですか?

アルカリ性の洗顔料のほうがにきびに良いという根拠はありません。にきびのある方を対象にした比較試験では、弱酸性の洗顔料を使ったグループのほうが炎症性のにきびが減り、刺激症状も少なかったと報告されています。さっぱり感だけで選ばず、肌の状態に合わせて選びましょう。

弱酸性の洗顔料なら、何回洗っても大丈夫ですか?

弱酸性でも、洗う回数が多すぎたり、熱いお湯で長く洗ったりすれば、角層の脂質は失われます。洗顔料の種類と同じくらい、回数・時間・温度も大切です。

朝の洗顔は水だけでもよいですか?

皮脂が少なく、夜にしっかり洗顔している方であれば、朝はぬるま湯だけでも問題ないことが多いです。皮脂やべたつきが気になる部分だけ洗顔料を使うなど、肌に合わせて調整してください。

まとめ

秋冬は、汗や皮脂、角層のセラミドが減り、肌を弱酸性に保つ力が落ちる季節です。そこに熱いお湯や洗いすぎが重なると、つっぱりやしみる感じが出やすくなります。

保湿を増やす前に、まず洗顔を見直してみましょう。「弱酸性の洗顔料、ぬるま湯、短い時間、こすらない、すぐ保湿」。この5つが、秋冬の肌を守る基本です。

※本記事は一般的な情報です。症状や治療法には個人差があり、診断・治療は診察のうえで決定します。

参考資料

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  • Wan MJ, et al. International Journal of Dermatology. 2014.
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  • Choi EH, Kang H. Annals of Dermatology. 2024.
  • Paciência I, et al. International Journal of Environmental Research and Public Health. 2021.
  • Seki T, et al. The Journal of Dermatology. 2003.
  • Korting HC, et al. Infection. 1995.
  • 厚生労働省「遊泳用プールの衛生基準」

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