抜糸について、徹底解説。

キズを縫われたら、その後に考えなければならないことは何でしょうか?
もちろん、消毒やガーゼ交換など術後の処置も大切です。
そして、もうひとつ忘れてはいけないのが「抜糸」です。
「糸を切って抜くだけでしょ?」と思われるかもしれませんが、実は抜糸もなかなか奥が深いもの。
いつ抜糸するのか?
どうやって糸を抜くのか?
抜糸するときに痛みはあるのか?
抜糸後に気をつけることは?
今回は、そんな「抜糸」について詳しく解説していきます。
何故、抜糸しなければならないのか?
外縫いには、比較的感染を起こしにくいタイプの糸を使用します。
とはいえ、糸が身体にとって「異物」であることに変わりはありません。
必要以上に長期間にわたって糸を残しておくと、感染の原因になったり、糸が通っていた針穴のあとが目立ってしまったりすることがあります。

このため、傷の治り具合を見ながら、適切なタイミングで糸を取り除く「抜糸」が大切になります。
いつ抜糸するのか?
抜糸の時期は、縫合部の場所・状態・患者さんの背景によって異なります。
再発部位、関節部位・糖尿病がある場合・ステロイドを内服している場合などでは、縫合後2〜3週間を目安に抜糸することが多いです。
一方、顔などキズアトが目立ちやすい部位では、縫合後1週間以内に抜糸することが多くなります。
その他の一般的な部位では、縫合後1〜2週間がひとつの目安です。
ただし、単に「○日経ったから抜けばいい」という訳ではありません。
キズの治り具合を見ながら、適切なタイミングと方法を判断することが大切です。
ここで、抜糸するときに押さえておきたい3つのポイントをまとめておきます。
抜糸のタイミングを決めるポイント3つ
①基礎疾患があるか?
②よく動かす部位か?
③目立つ部位か?
をよく考えて、ベストなタイミングで抜糸する必要があります。
このタイミングを間違えてしまうと、キズアトの経過が不良となってしまいます。
しかし、どんなに慎重に考えて抜糸したとしても、次の例のように、キズアトが不安定になってしまうこともあります。
事例と対策を考えてみたいと思います。
足指切断後、キズが開いてしまったケース
75歳の女性。糖尿病と閉塞性動脈硬化症の持病があり、足の指が壊死したため、切断手術を行いました。
手術後は感染や血腫もなく、経過は良好でした。
ところが、術後1週間で抜糸したあと、傷口が不安定になって開いてしまい、そこから感染を起こしてしまいました。
糖尿病や閉塞性動脈硬化症がある方は、血流などの影響から傷が治るまでに時間がかかることがあります。
そのため、このケースでは通常よりも慎重に経過をみながら、3週間程度は抜糸せずに待つ必要がありました。
一見、順調に治っているように見える傷でも、患者さんの持病や血流の状態によっては、まだ十分な強度まで治っていないことがあります。
「傷がきれいだから、もう大丈夫」と判断するのではなく、その方の背景まで考えて抜糸のタイミングを決めることが大切です。
抜糸後のケアが、きれいな傷跡につながる
「抜糸が終われば、傷の治療も終わり」と思われる方は少なくありません。
しかし、抜糸直後の傷口は、まだ十分な強度がなく、とても不安定な状態です。見た目にはきれいに閉じていても、皮膚の内部では傷が完全に治っているわけではありません。
そのため、抜糸後に傷へ強い力が加わると、傷口が開いてしまったり、傷跡の幅が広がったりすることがあります。
特に、糖尿病や血流障害などの持病がある方は、傷の治りに時間がかかることがあります。今回ご紹介したケースのように、手術後の経過が順調に見えていても、抜糸のタイミングや抜糸後のケアには十分な注意が必要です。
そして、抜糸後の傷跡をできるだけきれいに治すためには、傷口に余計な力をかけないことが重要です。
当院では、傷の状態に応じてテーピングによる固定を行い、傷口にかかる負担を軽減します。また、定期的に傷の状態を確認することで、傷が開く、赤みが強くなる、盛り上がるといった変化にも早めに対応することができます。
つまり、「抜糸=傷跡治療の終了」ではありません。
抜糸後も適切なケアと経過観察を続け、傷がしっかり安定するまでフォローすることが、よりきれいな傷跡を目指す上で大切です。
当院では、キズアト治療を専門的に行い、抜糸のタイミングから抜糸後のケア、傷跡の経過観察まで丁寧にフォローしています。
「抜糸後に傷が開いてしまった」
「手術後の傷跡がなかなか治らない」
「赤みや盛り上がりが残っている」
「できるだけ傷跡をきれいに治したい」
このようなお悩みがある方は、傷が落ち着くまで自己判断で様子を見るのではなく、一度専門医にご相談ください。
傷跡は、できてから時間が経っていても治療できる場合があります。一方で、早い段階から適切なケアを行うことで、傷跡が目立ちにくくなることもあります。