傷あとが赤く盛り上がるのはなぜ?肥厚性瘢痕とケロイドの違い・耳のケロイド治療
形成外科・皮膚科|傷あと・耳のケロイド
手術やけが、ニキビ、ピアスのあと。「傷はふさがったのに、赤く硬いしこりができた」「耳たぶのしこりが少しずつ大きくなっている」——そんな症状はありませんか。傷あとにはいくつかの種類があり、治療法も異なります。今回は耳にできるケロイドの手術と、手術後に再発を防ぐための工夫もご紹介します。
① 肥厚性瘢痕とケロイドの違い ② 傷あとのケア ③ 耳のケロイドの手術方法 ④ 再発を防ぐための治療
1.傷あとが盛り上がるのはなぜ?
皮膚に傷ができると、体はコラーゲンなどを作って修復します。ところが、炎症が長引いたり、傷が引っ張られたりすると、必要以上に組織が作られ、赤く硬く盛り上がることがあります。体質や傷ができた場所も関係します。
2.肥厚性瘢痕とケロイドは何が違う?
| 比べる点 | 肥厚性瘢痕 | ケロイド |
|---|---|---|
| 広がり方 | 元の傷の範囲にとどまることが多い | 元の傷を越えて広がることがある |
| 時間がたつと | 少しずつ落ち着く場合がある | 大きくなったり、長く続いたりすることがある |
| 症状 | 赤み、硬さ、かゆみ、つっぱりなど | 赤み、硬さ、かゆみ、痛みなど |
| できやすい場所 | 手術の傷など | 胸、肩、耳たぶなど |
実際には、両者をはっきり分けられないこともあります。耳のしこりが必ずケロイドとは限らないため、まずは診察で状態を確認します。
3.傷あとを悪化させないためにできること
傷がまだ開いているときは、医師の指示に従って清潔に保ち、適切に保護します。傷が閉じた後は、傷の状態に応じて医療用テープなどで保護したり、皮膚に強い力がかからないようにしたりします。具体的なケア方法は診察時にご案内します。
赤みや盛り上がりが増す、かゆみや痛みが長引く場合は、セルフケアだけで様子を見ずにご相談ください。
4.病院ではどのような治療をするの?
傷あとの種類や大きさに応じて、ステロイドを含むテープや注射、固定・圧迫、手術などを検討します。レーザーを用いる場合もありますが、すべての傷あとに同じ治療が合うわけではありません。
5.ピアスのあとにできる「耳のケロイド」
耳のケロイドは、ピアス穴の周囲などに生じることがあります。耳たぶにできるものと、耳のふち(軟骨がある部分)にできるものでは、手術の際に気をつける点が異なります。
耳は小さな部位ですが、見た目の形が複雑です。そのため、しこりをできるだけ適切に取り除くことと、耳の輪郭を保つことの両方を考えて手術方法を選びます。
6.耳のケロイドの手術にはどんな方法がある?
比較的小さな耳たぶのケロイドでは、しこりを切除して傷を閉じられることがあります。耳たぶがくびれたり、引っ張られて変形したりしないようにします。
大きい場合は、表面の皮膚を生かしながら内側の硬い組織を取り除く「核切除」という方法を検討します。皮膚を残すことで、耳の形を守りやすくする考え方です。
耳輪などでは、切除のあとに皮膚を移動する「皮弁」や、別の場所の皮膚を補う「植皮」が必要になることもあります。軟骨は病変の広がりに応じて慎重に扱います。
すべての患者さんに最適な単一の術式があるわけではありません。大きさ、場所、過去の手術歴、耳の形を見て決めます。
7.再発を防ぐために、手術のあと何をする?
手術後には、患者さんの状態に応じて次のような治療を組み合わせることがあります。
- ステロイド注射・テープ:傷あとが再び硬く盛り上がるのを抑えるために使います。
- 圧迫:耳用の圧迫器具などで適度な圧をかけます。続けられる方法かどうかも大切です。
- 術後の放射線治療:一部の患者さんで再発予防として検討します。年齢やリスクなどを考え、必要なら対応する専門施設で相談します。
- 定期診察:赤み・かゆみ・痛み・しこりの硬さなど、再発の兆候を早めに確認します。
研究でわかってきたこと
2026年に公表された研究では、耳のケロイドを切除したあとにステロイド注射を行ったグループと、放射線治療を行ったグループの再発について、多くの研究をまとめて比較しています。再発率はそれぞれ約12%、約13%と報告されました。ただし、患者さんの状態や治療の方法、観察期間は研究ごとに異なるため、「どちらも必ず同じ効果がある」「個人の再発率がこの数字になる」という意味ではありません。
そのため、手術法も再発予防も一律ではなく、メリットと注意点を相談して決めることが大切です。
8.こんな変化があれば早めにご相談ください
よくあるご質問
A.自然には落ち着きにくいことがあり、少しずつ大きくなる場合もあります。早い段階なら手術以外の治療を検討できることもあります。
A.再発する可能性はあります。だからこそ、しこりを取る方法と術後の注射・圧迫などを、手術前からセットで考えます。
A.しこりの位置や大きさによります。表面の皮膚を残す方法や、耳の輪郭を整える手術を検討しますが、希望する形を必ず再現できるわけではありません。
A.必ずしもそうではありません。症状や大きさによって、テープや注射などから始める場合もあります。
まとめ|「しこりを取る」だけでなく、その後も大切
肥厚性瘢痕とケロイドは、見た目が似ていても経過が異なります。とくに耳のケロイドでは、しこりを取り除くことと耳の形を守ることの両立が重要です。そして、手術後の再発予防と定期診察まで含めて治療を考えます。
下北沢スキンクリニックでは、皮膚科・形成外科の視点から、傷あとや耳のしこりの状態を確認し、適切な治療方針をご案内します。気になる症状があれば、お気軽にご受診ください。
耳のしこり・盛り上がる傷あとが気になる方へ
「ケロイドかもしれない」「ピアスのあとが大きくなってきた」など、まずはご相談ください。必要な治療とその後のケアを一緒に考えます。
1.Ogawa R, et al. Japan Scar Workshop Consensus Document 2018. Burns & Trauma. 2019. 日本瘢痕ケロイド治療研究会のコンセンサス
2.American Academy of Dermatology. Keloid scars: Diagnosis and treatment
3.Which Adjuvant Modality Is Superior after Auricular Keloid Excision: Radiotherapy or Triamcinolone? Systematic Review and Meta-Analysis. 2026. PubMed
※上記の再発率は複数の研究をまとめた集計で、個々の患者さんの経過を予測するものではありません。本文は一般向けの医療情報で、治療効果を保証するものではありません。放射線治療を当院で実施するという意味ではありません。