メンタルの保ち方 〜埋没編〜
埋没法は、「目元」という非常に繊細な部位に対する手術です。
術式そのものは比較的シンプルですが、患者さんの心理状態によって、手術中の状況は大きく変わることを日々感じています。
精神科医としても、「心と身体は別々ではなく、密接につながっている」ということをお伝えしたいと思います。
◯埋没で生じる「個人差」とは?
埋没法は短時間で終わる手術ですが、実際には患者さんによって手術の進み方は大きく異なります。
もちろん、まぶたの厚みや皮膚の状態など、解剖学的な違いが手術のしやすさに影響します。
一方で、それとは別に、精神的な緊張の程度による個人差も少なくありません。
手術中には、
- まぶたに力が入ってしまう
- 眼球が思うように動かせない
- 無意識に目を閉じようとしてしまう
このような反応がみられる方も多くいらっしゃいます。
逆に、リラックスしている方では、こちらの指示にも自然に反応できるため、手術がスムーズに進むことが多い印象です。
◯手術がスムーズに進みやすい方の共通点
その特徴は、「まぶたの力が抜けていること」です。
ただし、意識的に力を抜こうとしても、それは簡単なことではありません。
では、その違いはどこから生まれるのでしょうか。
10代から40代まで、多くの患者さんを診察・手術してきて感じることがあります。
それは、
シミュレーションで決めた二重ラインに十分納得し、手術への不安が整理されている方ほど、結果としてまぶたの緊張も少ない傾向があるということです。
不安が強くなると交感神経が優位になり、筋肉の緊張が高まります。
身体は「身を守るモード」に入り、この反応が、まぶたや眼球の動きにも現れます。
つまり、「緊張しているから力が入る」のではありません。
不安という心理状態が、自律神経を介して身体反応として現れていると考えると理解しやすいでしょう。
だからこそ、手術がスムーズに進みやすい方とは、緊張していても、不安がある程度整理されている方と言えます。
◯ 「心配しない」のではなく、「心配を整理する」
「緊張しないようにしてください。」
一見簡単そうですが、実はとても難しい言葉です。
人は、「緊張してはいけない」と思うほど、自分の身体の反応に意識が向き、さらに緊張してしまいます。
精神療法では、これを過度な自己注目と考えます。
例えば面接試験でも、
「声が震えていないかな」
「うまく答えられるかな」
と考え続けるほど、身体は硬くなってしまいます。
一方で、
「準備は十分した。」
「分からない質問があっても、それは仕方ない。」
このように結果をある程度受け入れられる状態では、注意は自分の不安ではなく、目の前の課題へ向きます。
埋没法も同じです。
「このラインでお願いしよう。」
「多少気になることがあれば、術後に相談すれば大丈夫。」
そのくらいの心理的な余白を持てる方は、自然と身体の緊張も和らぎ、結果として手術にも協力しやすい状態になります。
◯ メンタルはダウンタイムにも関係する?
「メンタルでダウンタイムが変わるなんて、本当ですか?」
そう思われる方もいるでしょう。
もちろん、腫れや内出血は、術式・体質・血管走行など、多くの要因によって左右されます。
一方で、心理的ストレスは、自律神経やホルモン分泌、炎症反応にも影響すると考えられています。
そのため、精神的緊張が強い状態では、身体がストレス反応を示しやすくなる可能性があります。
私自身の臨床経験でも、必要以上に緊張せず、リラックスして手術を受けられた方のほうが、術後経過も比較的穏やかな印象があります。
もちろん、これは個人差があり、すべての方に当てはまるわけではありません。
◯ 最後に
埋没法は、医師の技術だけで完結する手術ではありません。
患者さんにも、少しだけ協力していただく場面があります。
だからこそ、手術当日に「完璧に力を抜こう」と頑張る必要はありません。
「ここまで考えて決めたから大丈夫。」
「もし気になることがあれば、そのとき相談しよう。」
そんな少しの心の余裕が、身体の緊張を和らげ、落ち着いて手術を受けることにつながります。
心と身体は、私たちが思っている以上につながっています。
埋没法を受ける際にも、そのことを少しだけ思い出していただけたら嬉しく思います。